« ■個人の自由と国家の役割。『日本の、これから』 納得していますか?あなたの働き方。 | トップページ | ■完璧なプロットに脱帽。『プロポーズ大作戦』 その優しさ。 »

2007年6月28日 (木)

■遺伝子から見た死生観。『爆笑問題のニッポンの教養』 ヒトはなぜ死ぬのか?

■「爆笑問題のニッポンの教養」が、ひそかに面白い。

いろいろな分野の最先端を走っている研究の現場に爆笑問題の2人が乱入し、太田が引っ掻き回し、田中が突っ込むという番組。狭い世界に閉じこもりがちな小難しい最先端の話を、日常感覚の世界に引きずり出すことに見事に成功している。

再生医療の回ではシャーレの中で人工的に「作られた」イモリの心臓を見て、「命がどこから来たのか」と考え込み、

人類学の中沢新一の回では、原初人類の見ていた景色をヴィヴィッドに再現した一面オレンジ色の研究室の中で、次々と浮かぶイメージをシャッフルすることによる予定調和的発想からの跳躍を試み、

惑星生物学の回では、銀河系に生命が存在する地球以外の惑星がある可能性が10%程度という、その意外な確率の高さに驚き、地球外生命の姿に思いを馳せる。(この番組の収録後に、地球型生物が生存可能な水の惑星 gliese 581cが発見されたりする共時性的面白さもあった!)
Photo_131 Photo_132 Photo_133

こういう時の太田は天才的である。発想の枠組みが広いというのか、最先端の研究に対して「へぇ~」と感心するのではなく、その内容を自分なりに消化して、研究者に意外な切り口から疑問を投げかける。

この対等な立場を維持しょうという姿勢が、研究者の「むむっ?!」を生み、予定調和に留まらない新鮮で活性化された「場」を創り出す。

そして、その「場」が現実から遊離しないように、絶妙な力加減で大地に括りつけるのが田中の役割である。田中がいなければ、その創造的な「場」は太田の暴走により空虚なカオスに沈みこみ、シャボンのように消えてしまうだろう。

そういう意味で、このコンビは「やすし・きよし」並みの最強タッグと言えよう。爆笑問題の起用は大成功である。

■前振りが長くなった。

今回のテーマは「ヒトはなせ死ぬのか?」
Photo_130

東京理科大学薬学部の田沼靖一教授は、細胞の生と死を決定する分子メカニズムに関する第一人者。

1994年、田沼教授はDNAを切断して、細胞の機能を停止させる「死の遺伝子」を発見した。いわゆる「アポトーシス」を起させる遺伝子だ。

■われわれ人間は60兆個の細胞で形作られているが、そのうち実に3000~4000個もの細胞が毎日「死」を迎えており、細胞分裂によって同じ数の細胞が日々生まれ、入れ替わっているという。

これは、まあ新陳代謝として日々実感していることなのだが、驚くべきことに大腸菌やビフィブス菌のような細菌は自ら死んでいくことは無く、栄養物がまわりにある限り無限に生き続けるというのだ。

45億年前に地球が誕生し、細菌は早くも35億年前に発生している。そしてその後の20億年の長い期間を経て、オスとメスという「性」をもった生物が誕生する。2セットの遺伝子を持つ、2倍体生物だ。 

そして、自ら死ぬというアポトーシスも、この時に同時に発生した。つまり、「性」と「死」はセットで生まれてきたということだ。

この「性」と「死」のセットをもつことで、遺伝子は自らをシャッフルし古い遺伝子を消去するという戦略を獲得した。つまり、「永遠に生き続ける不変の生」から、「常に変わり続ける進化する生」への転換である。そうして生命はその多様性を爆発的に開花させていったのだ。

■そういう視点で「生」を考えたとき、遺伝子研究という科学の最先端の場は哲学の領域に急速に接近する。

「死」と「創造(変わること)」は同義語となり、「死」という言葉の持つネガティブなイメージが転換されていく。

「死」があるから、「我々は何者なのだ」と考えざるを得ない。そして、生きている幸せも、「死」があるからこそ感じることが出来るのだ。

自ら死ぬというアポトーシス機能を失ったガン細胞は、無限に生きることによって自らをも死に至らしめる。

不老不死は決して幸福なものではないのだ。

■そこで太田は考える。

「『死』というのは、ある意味、落語の『オチ』と同じなのではないか」。

落語というものは、さんざ面白い話を聞かせて、聞くものを心地よい空想世界に引きずりこむのだけれど、そのオチは大抵、駄洒落のようなガッカリするほどつまらないものである。

その「急に突き放す感じ」が、「死」と似ているというのだ。

だが、その「オチ」があるからこそ落語は面白い。
それは人生にもつながるものじゃないだろうか、と。

やっぱり、太田は天才である。
  
 
__16 爆笑問題×東大 東大の教養

__17 死の起源 遺伝子からの問いかけ

   
  

■ Amazon.co.jp ■
【 書籍・ベストセラー 】

【 DVD・新着ベストセラー 】

  
   
■爆笑問題のニッポンの教養

NHK総合 隔週金曜日夜11時放送
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/

                       <2007.06.23 記>

|

« ■個人の自由と国家の役割。『日本の、これから』 納得していますか?あなたの働き方。 | トップページ | ■完璧なプロットに脱帽。『プロポーズ大作戦』 その優しさ。 »

コメント

こんにちわ。
おもしろそうな番組ですね。
電波が弱くて、BS以外入らない家のTVですが、やはり高いアンテナを取り付けてみようかなあ、と思いました。
でも、富士山の麓は、ダメでしょうかね・・

投稿: misaton | 2007年6月28日 (木) 08時50分

富士山が邪魔して電波が届かないんですかねー。意外な盲点です。
でも、地上波の番組はガヤガヤうるさいし、良いんではないでしょうか。BSだけでも。
いろいろ見始めるとキリがないですしね。

なーんて、ヒトゴトだと思って勝手なこと言ってスミマセン。
では、また。

投稿: 電気羊 | 2007年6月28日 (木) 18時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/208704/15530657

この記事へのトラックバック一覧です: ■遺伝子から見た死生観。『爆笑問題のニッポンの教養』 ヒトはなぜ死ぬのか?:

« ■個人の自由と国家の役割。『日本の、これから』 納得していますか?あなたの働き方。 | トップページ | ■完璧なプロットに脱帽。『プロポーズ大作戦』 その優しさ。 »