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2007年4月 4日 (水)

■人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」

久々に歯ごたえのあるドラマを見た。

   

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あまりに濃密過ぎて消化するのに1週間以上が経ってしまった。
とはいえ、そのまま記憶の彼方に過ぎ去らせてしまうには、あまりに惜しい作品なので、物語に沿って感じたことを書き連ねてみよう
と思う。

少し、長くなるかもしれない。

■バブル崩壊後の失われた10年といわれた時代。
手持ちの不良債権を、気付かれず如何に上手く処理するかにアタマを悩ませる銀行。
昨日の夢を忘れられず、何とか生き延びようとあがく企業経営者。
それは夢だったんだよと厳しい現実を突きつける外資系ファンド。
その3者の思惑が錯綜する中でドラマが進行する。

■冷徹な外資ファンドを代表する鷲津(大森南朋)と
日本の現状に疑問を抱きつつも、外資の非情さに対抗する銀行マン芝野(柴田恭平)。
物語の前半は、この対立の構図が骨格にあり、見るものは芝野に共感を覚えるだろう。
だが、鷲津がメガネを外した時にふと見せる表情に、彼の内なる葛藤をみる。

■後半、総合電機メーカー大空電機創業者、大木昇三郎会長が登場。彼は、古き良き日本企業そのものである。
大木会長という触媒を得て、物語は転調、マネーゲームの深刻さと滑稽さの奥底にある「企業とは何か、誰のものか?」という核心部分に迫っていく。

自分自身、ものづくりに携わる技術者として、一気に引き込まれた部分である。

■鷲津は、自らの2面性に決着をつける時が来る。が、その定まった決意をあざ笑うかのようにホライズンからの解雇、負傷という形でゲームから弾き出される。
また、
芝野は、企業再生家として立ち上がった勇気を、大空電機社員の自殺という形で挫かれてしまう。

■最終回、芝野が鷲津に言う。「俺たちは同じだ。」
そして、今まさに大空電機の根幹であるレンズ部門を売却しようとしているホライズンに対し反撃に出る。
EBO、従業員による事業の買収という象徴的な形で。

■鷲津は、ゲームから弾き出され、リハビリ生活を送る中で自分を見つめ直すことができたのだろう。そこには、メガネという仮面で傷つきやすい自分を守る必要のない、しっかりとした表情があった。

「西野さんはお前に旅館を継がせたがってた。誰よりもお前のことを買ってた。それは金持ちになれってことじゃない。
きちんと事業をするということだ。
戻って来い。もう一度。」

このコトバ。決して西野にだけ向けられたものではない。
鷲津自身が人間として再生した、その宣言でもあるのだ。

■番組を見終え、改めて自分自身の胸に手を当てて問うてみる。
 「そこに希望はあるのか?誇りはあるのか?」
 
そして、「私の原点は、何処にあるのか?」

***********************

ストーリーは非常に良かったが、それだけがこのドラマの魅力ではない。
■毎回、その画面作りに、惚れぼれさせられた。
何か平板な、けれど何処かに不安を感じるブルーな画面。
窓から差し込む過剰なまでの眩しい光。
雨の中、道端に放置されたカメラから撮られたような、低く斜めに傾ぐ告別式の画面。
画面が登場人物の心の様子を十分に伝えていた。
そこにコトバはいらない。

そして何といっても、役者が良かった。

■大森南朋さん
本文でも語ったけれど初盤のメガネを外すシーンとか、最終回での雰囲気とか。いろいろな心の在り様をきっちりと、自然に演じ分ける。
役者やのう。

■柴田恭平さん
どうしても、華麗なステップでキュー。という感じの昔のイメージがあったので、あの抑えた渋さに驚いた。(けれど、ご病気の話が気になります。あまり頑張りすぎず、ご自愛ください。)

■松田龍平さん
松田優作の「静かな狂気」の部分を切り取ったかのようだった。1話目、彼が俯いて立っている。その姿だけで背筋が、ぞくっとした。
別のドラマで、はっちゃけた龍平も見てみたい。

■他、ちょい役の方まで全員が本当に上手い役者さんばかり。ホント贅沢。

「いやードラマって本当に素晴らしいですねぇ。」
と、水野晴郎を気取りたくなる、そんなドラマだった。
                                                        
                        <2007.04.04 記>

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20072月―3月 NHK土曜ドラマ
■原作 真山仁 「ハゲタカ」「バイアウト」
■演出 大友啓史 井上剛 堀切園健太郎
■脚本 林宏司
■音楽 佐藤直紀
■出演 大森南朋、柴田恭平、栗山千明、松田龍平ほか

 

    

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●「ハゲタカ」原作● 
真山仁 著
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コメント

土曜ドラマ、ハゲタカ。いろいろなトラックバックを読みましたが、あなたがお書きになった視点が、私と同じだったので、コメントを書きたくなりました。特にメガネを使った心理表現、演出家の意図したものか、大森南朋さんのお考えか分かりませんでしたが、うまいと思いましたし、見る者にも主人公の激しさの中に秘めた思いを感じさせました。私は仕事上テレビを観る時間の無い生活を10年余り過ごしていましたので、俳優さんには初めての方が多かったのですが、今はお若い俳優さんでも演技派といえる演技をなさるのに感服しました。
このドラマで、あまりよく見えなかった日本の経済について知識が増え、そうだったんだと見えて来ました。原作のハゲタカも読みました。
最後に自己紹介。私は80歳の方が近い、しかし、まだ嘱託で仕事を持っている女性です。

投稿 藤岡妙子 | 2007年4月11日 (水) 21時23分

コメントありがとうございました。
世代が違っても同じ物の見方をされる方が
いらっしゃるという事に何か不思議な
感銘を受けました。うれしかったです。

気が向かれましたら、
また、このブログも眺めてやってください。

投稿 電気羊 | 2007年4月13日 (金) 18時37分

はじめまして。
放送終了後二ヶ月近く経ちますが、
「ハゲタカ」には未だハートを奪われたままです。
「ハゲタカ」のない土曜夜には、
ぽっかり穴があいたようでしたね。

先日同じようなハゲタカ欠乏症の仲間たちと、
某AVルームを使っての
全6話一気見上映会を開催しました。
100インチの大画面で観ると、
改めて映像表現の素晴らしさがひしひしと感じられます。
カメラワーク、照明、音楽などが、
役者たちの演技と一体になって作り上げられた、
奇跡のようなドラマだなと。

第1話を観終わった段階で、
2時間ものの映画を観た後のような疲労感に襲われ、
休憩をはさみながら6話まで見終わる頃には、
身も心もへとへとでした。

7月発売のDVDには、
未公開シーンなどの特典映像もつくようなので、
今から楽しみです。

投稿 a-sakura | 2007年5月20日 (日) 23時30分

a-sakuraさん。
6話耐久マラソンとは、ものすごい濃さですね。
100インチかぁ・・・。さぞかし『ハゲタカ』ワールドを堪能できたでしょうね。うらやましい!

投稿 電気羊 | 2007年5月21日 (月) 12時22分

私はこのドラマの美術パートを担当したチームの一員でしたが、美術はどうでしたか?

役者、カメラ、照明、演出が誉められているのに、美術が忘れられているのは残念です。

スタッフとして、このように、批評賞賛いたでけるのはたいへんありがたいことです。最近のNHKは、いい番組を多く制作しておりますので、そちらもみてやって下さい。

スタッフの一人より

PS;松田龍平君は「恋の門」という映画で、かなりいいかんじではじけてますし、大森君も多くのマイナーな映画で、多面な演技力を発揮しています。興味ある方はぜひご覧下さい。

投稿 hagetenai | 2007年5月30日 (水) 03時48分

hagetenaiさんへ

スタッフの方からコメントを頂けるなんて光栄です。

ハゲタカのような濃密な作品の現場は、さぞかし大変だったでしょうね。でも、大変ではあるものの、きっと皆さんが楽しみながら創っていたのだろうなと想像いたします。

美術さんのお仕事に言及できなかったのは申し訳ないです。なんせ勉強不足なもんで美術に関しては節穴なのです。
「違和感を感じさせないのが美術の素晴らしさ」と、お茶を濁させてください。(ゴメンナサイ!)

「ハゲタカ」は本当に素晴らしい作品でした。こうして、いい作品に出会うことが出来たのも、スタッフの皆さんのおかげだと思っております。
ありがとうございました。

気が向いたら、また遊びに来てくださいね。お待ちしております。

投稿 電気羊 | 2007年5月30日 (水) 17時22分

美術スタッフAです。
すばやすいレスポンスありがとうございます。いや、じつに上手に的確にドラマを把握されていたので、映像制作に関しても博識な方だと思いましてつい書き込んでしまいました。

美術パートへのコメントはメガネだけでも十分です。仕事は映像に残っていますので。
ただ、全体的に違和感はなかったようなので、安心しました。現場は苦労しました。
さまざまな企業の皆様にもお世話になりました。柴田さんの闘病や、役者の交代などさまざまないわくつきのドラマでしたので、ポジティブな反響は素直にうれしいです。
原作が、いいので、ぜひお読みください。

ドラマとは舞台設定がちがうので、あらためてハゲタカワールドを堪能できると思います。とくに鷲津の内面がよく書かれているので、興味ある方はぜひどうぞ。

投稿 hagetenai | 2007年5月31日 (木) 00時09分

初めまして。 未だに、「ハゲタカ」ワールドから離れられない、40代です。 たまたま美術の方のコメントを拝見させていただきまして、・・・つい書き込みさせていただきました。 個人的には、割烹のシーンの美術が際立っていたような印象があります。 割烹の襖の絵柄が蛇の目傘風に描かれているのですが(鷲津が入ってくる、後ろの襖です)、これが見ようによっては、猛禽類の険しい目のようにも見えるのです。 そして、床の間には、タカの木の彫刻が置かれており、まさに、前後から狙われているという緊張感が素晴らしかったですね。 他にもいろいろあるのですが、長くなってしまいますので、これくらいで。 8月の再放送また見ようと思ってます。

投稿 三型 | 2007年7月13日 (金) 22時26分

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