■ひつじの本棚■ 『あんぱんまん』 やなせたかしと「正義の味方」
『あんぱんまん』 作・絵 やなせ たかし
■うちの2歳のチビ助はアンパンマンが大好きである。そこで父さんは絵本を買ってあげようと思ったのだ。
だが、数日後に届いた「あんぱんまん」は、何ともみすぼらしいもので、そのあたたかい笑顔に面影はあるものの、あのツヤツヤした健康そうなテレビのアンパンマンとは、かなりかけ離れたものであった。
その、みすぼらしい「あんぱんまん」は、西に、おなかを空かせた旅人がいれば、自分のアタマを差し出して食べろといい、東に迷子になった子供がいれば、家へ送り届けるばかりか、子供に元気が出るからと、残り少なくなった自分のアタマを食べろというのだ。
■やなせたかし さんは、あとがきに記している。
「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものなのです。・・・」
『悲壮なまでの使命感』。
そいういう言葉が浮かんだ。
いつも明るい笑顔を絶やさない、だが、その胸のうちには悲壮な決意が秘められているのだ。それは、戦争を経験している世代だからこそ語れる言葉なのだろうか。
■今の日本で言えば、イラク復興支援に全力を尽くし、2003年11月、彼の地で凶弾に倒れた奥克彦大使のような人が、真の「正義の人」と呼べるのかもしれない。
「正義の味方」というものは、かくも辛く厳しいものなのか、と手に取った「あんぱんまん」を眺めながら感じ入ったのであった。
ちなみに、うちのチビ助は、この「あんぱんまん」にも大いに喜び、お気に入りの絵本の一冊になっている。
■『あんぱんまん』
作・絵 やなせ たかし
1976年
そういえば、4/20、横浜みなとみらいに
アンパンマンこどもミュージアムがオープンします。連れて行ったらチビ助は大喜びだろうな。
親はヘトヘトになりそうですが(苦笑)。
<2007.04.17 記>
追記)
「手のひらを太陽に」。この歌が、やなせたかし さんの作品だということに最近になって気がついた。
手のひらを太陽に透かしてみれば
真っ赤に流れる僕の血潮
このフレーズは、子供の頃から好きだったのだが、改めて噛み締めてみると、その感性の奥深さに、しみじみするのであった。
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